甘夏民家インタビュー(後編)

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『甘夏民家』と「旅する大家」ができるまでの経緯について語られた前編に続き、後編では、「サラリーマン大家」ブームに見られる最近の不動産賃貸業への疑問と、その望ましいアップデートの姿を模索していきます。

(写真;カフェ『雨ニモマケズ』で横山亨さん(右)に行ったインタビューの2回目)

 

 

退職のキッカケとなった、大家業への失望

 

室田:大手不動産会社勤務から今に至る流れはどのような感じだったのですか?

 

 

横山:約8年間、大手不動産会社に勤務している時は、主に土地や建物の売買に沢山関わらせていただきました。

 

ただ、自分の中で不動産に対する考え方や価値観が変わっていくのを感じていて、色んな方の不動産コンサルタントに関する本を読みまくり、不動産関係の講習会などにも参加してみると、自分の進むべき方向性が見えたような感覚があって。ちょうどその当時、筆名な不動産コンサルタントの方が、久々にスタッフを募集されていると聞いて、すぐに応募し、ご縁あってその方の不動産コンサルタント会社に転職しました。

 

それからは、その不動産コンサルタントの方とともに、さらに沢山の不動産コンサルティングにも関わらせていただきました。

 

 

室田:なるほど。昔からかなり有名な不動産コンサルタントの方ですね。ではその延長線上に今の横山さんがある、という感じでしょうか?

 

 

横山:それがまたそうではなくて。

 

ちょうど当時は、「サラリーマン大家さん」という言葉が出始めたタイミングで、割安で買える旗竿地を買って長屋を建てたり、フルローンを組むための違法な二重売買契約とか、お金儲けのための善悪様々なテクニックが共有され始めたタイミングでした。

 

そんな中で仕事を続けていくうち、すごく失礼な言い方だと思いますが、自分の正直な気持ちなのであえてそのまま言わせていただくと、不動産コンサルティングで関わった多数の大家さんや大家業を目指している人を見ていると、数字しか見ていないというか、自分だけ儲かればそれでいいというような、欲の張った方がすごく多くて。そういう人たちと接することに心底嫌気が差してしまったんです。

 

せっかく自分なりの不動産への正しい向き合い方ができて、それを多くの方に広めるチャンスも手にしたんですけど、なかなかお金最優先の考えを変えさせるには至らなくて。

 

最終的には、自分の知識をそうしたお金儲けの人たちに教えるのが嫌になってしまって。入居者をただの金づるとしか考えられない人たちのためには絶対に働かないと決めて不動産コンサルタント会社を退職しました。その後、職業技術訓練校に通って建築の施工技術を習得し、今に至っています。

 

 

室田:僕の感じていることもまったく同じなので、すごく共感できます。

 

だからこそ僕たちは、すでにお金最優先になってしまった大家さんをなんとかするよりも、ホビーとして不動産を楽しもう!というメッセージに共感してもらうところから始まった、新しいマインドの大家さんを増やすことで、大家業のアップデート、ひいては愛ある不動産を増やしていきたいと考えているんです。

 

そのためにここで、横山さんのお話を伺って、広く伝えるチャンスをいただけたことはありがたく思ってます。だから横山さん、大家業を見限らないで下さい(笑)。

 

 

横山:僕も、東京R不動産さんにこそ、是非そうした流れを変えてもらいたいと思っています。日本でリノベーションの流れや、不動産業の新しい価値観を作ったのは間違いなく東京R不動産さんなので。期待しています!

 

僕は、最近の人ってみんな、facebookとかインスタでキラキラした日常を演出したり、また、そういう情報に触れることに疲れてしまっていると思うんです。今はその反動で、フェイクじゃない、リアルなものを求めたい気分になっているんじゃないかと。

 

東京R不動産さんはリアルですよね。伝え方に嘘がない。だからちゃんと伝わるんです。正直、僕はデザイナーズマンションとか見てもまったくカッコいいと思えないし、そういうのにみんなが気づき始めているんじゃないかと思います。

 

レールの上を歩いて真っ当な会社に勤めていたって、いざリストラされれば、周りの人からの自分に対するイメージが壊れることに耐えきれなくて、心を壊す人だっている。でも僕みたいに、こんなタトゥーだらけで汗だくになってアパートの掃除とかしていると面白がってもらえるし、逆にそのリアルさが、僕という大家ブランドになってしまうこともあるかもしれない。今はそういう時代だと思うんです。

 

非常識に生きるって勇気がいることだけど、レールから外れたところでも、こんな風にちゃんと生きてるんだってことを誰かが示していくことが、これからの日本を面白くするためには絶対必要だと思います。アフロの不動産屋だってある意味そうじゃないですか(笑)。

 

 

室田:ありがとうございます(笑)。勇気をもってこの髪型で生きていきます。

 

 

横山:でも本当に、誰かが不動産業の世界に革命を起こさないと、常識に縛られたつまらない物件、帰りたくない家しかなくなってしまいますよ。

 

だから世の中には、精神的に病んでいる人が増えてしまうんだと思うんです。住む空間が貧しいから。誰かが、ホッとする、居心地のいい空間を作らないとダメなんです。僕が最初のアパートの事件で痛感したのはそのことです。

 

このカフェだって、ここに来たら、また生きる気になれたとか、そんな風に思ってもらえる人が少しでもいたらと思ってやっているんです。

 

 

室田:僕自身、今日ここに来られて横山さんのお話しを聞けて、さらにやる気が出ました。

 

 

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どこにも属さないような異国感のある内装が魅力的



「旅する大家」と考える、不動産賃貸業のアップデート

 

室田:ちなみに横山さんは、物件を購入する時ってどんな考え方を大切にされているんですか?

 

 

横山:僕は自分の中で、ワクワクを感じられる物件以外は買わないと決めています。利回りとかキャッシュフローとかよりも、自分の気持ちが盛り上がるかの方が優先です。

 

というのも自分の場合、大家業を本業としてやっています。管理から掃除、デザインから施工までやっています。多い時は約60部屋ありましたが、自分のようなスタイルではキャパオーバーで、今は物件を減らしちゃんと全物件、楽しく向き合えることを大切にしています。

 

だから大家業が本当に面白いですし、仕事しているのか遊んでいるのか分からない状態でずっと作り続けている感じです。空いた部屋や共用部をどう変えようか?次はどんな企画にしようか?と考えている時間がすごく楽しくて。

 

あと自分の場合は、「旅する大家」としてやっていますので、自主管理をしつつ、電話受付サービスとか24時間事故受付サービスとか外部サービスもうまく使いながら、旅をしながらでも自主管理の大家業を続けられる仕組みを作る試みも、楽しみながら構築しています。

 

 

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室田:いいですね!本当に、僕たちの考え方と共通点が多いです。ちなみに、最近のサラリーマン大家ブームについてはどんなお考えですか?

 

 

横山:すごいと言われているカリスマ大家の基準が、資産規模やキャッシュフローの大きさだけで語られるような、結局お金をいっぱい残せたもの勝ち、みたいな価値観は、まったくポイントがずれているし面白くないと思います。残念ながら、大家業をやっている人の多くが、株とかビットコインとかやっているような感覚なんじゃないかなって。

 

大家業ってどうやっても、人と関わるんですよ。だから数字だけ見て人と関わる気がないなら、ネットだけで完結する株だけやっていればいいのに、株の感覚で大家業に関わる人が多いから、今みたいな愛がない賃貸物件が溢れかえっている世界ができあがったんだと思います。

 

 

室田:いわゆる世の中で成功していると言われる大家さんのイメージが、いい車に乗ったり、頭にサングラス乗せて世界中のビーチに行ったり、高級ホテルの写真を投稿するキラキラした人達って状況も気持ち悪いですよね。

 

 

横山:大家業でお金が稼げたとすれば、それは入居して下さる皆さんのおかげでそうなれたわけで、お金持ちになったからってそれを誇示するようなのは、まったく同意できませんね。

 

自分の物件がおかげさまで満室経営を続けられている理由は、自分がなにも持っていないところから大家業を始めたことも大きく影響しています。妻と2人で頑張って働いて稼いだお金を、コツコツと貯めて自己資金を作ったところから始めているから、不動産の勉強もしないで、勧められるがままに建てたアパートになんて愛情で負けるわけがない。

 

もし部屋が空いていたら、地道に不動産会社を回って募集チラシを配ったり頑張らないといけない、けどそういうところを端折ろうとする大家さんが多いですよね。僕だってやりたくてやっているわけじゃないですけど、そうやって泥臭く行動していますし、全物件プロのカメラマンさんに頼んで写真の他に動画まで撮影してもらい、自社HPで全物件の動画を流しています。そうした努力を続けると、業者さんもお客様に紹介しやすいから積極的に案内してくれるものですよ。そういう本気度だったり泥臭さ、愛情とかの部分が差になっていると思います。

 

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鎌倉の古民家には紫陽花がよく似合います

 

 

室田:ありがとうございます。

 

不動産賃貸業に関する最近の大きな話題といえば、スルガ銀行の不正融資から派生する、一連のかぼちゃショックだと思いますが、それに関してはどんなお考えですか?

 

 

横山:こんなこと言うと叩かれちゃうかもしれませんが、確かに騙されたというような面があることも否定はできませんが、それでも、不動産をちゃんと勉強した身からすると、少し調べれば絶対におかしいと分かるはずだったと思います。

 

不動産投資ってよく言いますが、不動産賃貸業ってやっぱり事業なので、どれだけの賃料からどれだけのローンを支払って、どの程度のリスクがあるのかをよく分析して、事業計画書が書けるくらいの最低限の知識はやっぱりちゃんと勉強しないといけませんよね。

 

 

室田:確かに、不動産「投資」という響きが、株やビットコインとかに近い印象を与えてしまう面もあるのかもしれませんね。

 

僕たちも、大家業をお金儲けのための副業としてではなく、楽しめるホビーとして捉え直すことで、素敵なコンセプトや不動産の楽しみ方をしている大家さんが出てきて、それを他の人が真似したり、さらにアップデートするような、そんな世界を作ってみたいと考えているんです。

 

おでこサングラスにはどうしても憧れが持てないですが(笑)、不動産を心から楽しんでいる大家さんが増えたら、きっと大家さんが憧れの職業にもなり得ると思っています。

 

いつか不動産が物件の魅力だけでなく、「あの大家さんの物件だから借りたい」といって選ばれるような時代がくることを夢見て活動していきたいと思います。

 

大変参考になる、またワクワクするお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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